妊活コラム

着床とは?いつ起こる?症状・着床出血・胚移植後の流れまで詳しく解

着床とは?いつ起こる?症状・着床出血・胚移植後の流れまで詳しく解「今ごろ、もう着床しているのかな?」

排卵後や胚移植後は、そんなことが気になってしまう時期だと思います。

いつもより下腹部がチクチクする。胸が張っている気がする。眠い。おりものが変わった。少し出血した。

一つひとつの変化が気になって、「これって着床したサイン?」「もしかして着床出血?」と検索した経験がある方もいるのではないでしょうか。

特に体外受精では、採卵して、受精確認をして、胚が育つのを待って、ようやく迎えた胚移植です。移植が終わると、今度は「ちゃんと着床してくれただろうか」という心配が始まります。

インターネットを検索すると、

「下腹部がチクチクしたら着床痛」

「少量の出血は着床出血」

「眠くなったら妊娠のサイン」

といった情報がたくさん出てきます。

ただ、最初に知っておいていただきたいことがあります。

身体に何か変化があったからといって、それだけで着床したとは判断できません。反対に、何も症状がないからといって、着床していないとも判断できません。

特に体外受精では、ホルモン補充や黄体ホルモン製剤など、治療そのものによって身体に変化が出ることがあります。腟剤を使用している方であれば、少量の出血についても着床以外の理由を考える必要があります。

この記事では、「この症状なら着床しています」という答え合わせはしません。

そもそも着床とは何なのか。いつ起こるのか。自然妊娠と体外受精では何が違うのか。着床したかどうやって確認するのか。そして「着床出血」と呼ばれているものをどう考えればよいのか。

妊活中の方、とくに不妊治療を受けている方に知っておいてほしいことを、一つずつ整理していきます。

着床とは?妊娠が成立するまでに起きていること

「着床」という言葉は知っていても、身体の中で実際に何が起きているのかは意外と分かりにくいものです。

まずは妊娠成立までの流れから見てみましょう。

受精と着床は同じではありません

妊娠というと、「卵子と精子が出会って受精する」場面をイメージする方が多いと思います。

もちろん受精は大切な段階ですが、受精しただけでは着床ではありません。

自然妊娠の場合、排卵された卵子は卵管へ取り込まれ、精子と出会うことで受精する可能性があります。

受精した胚は細胞分裂を繰り返しながら発育していきます。2細胞、4細胞、8細胞と分裂し、桑実胚などの段階を経て、やがて胚盤胞へと成長していきます。

その間に胚は卵管から子宮へ移動し、子宮内膜との相互作用を進めながら着床へ向かいます。

大まかな流れは、

排卵 → 受精 → 胚の分割・発育 → 子宮へ移動 → 胚盤胞 → 着床

です。

体外受精を経験している方なら、「初期胚」「桑実胚」「胚盤胞」という言葉を培養結果の説明で聞いたことがあるかもしれません。

体外受精では、自然妊娠なら身体の中で進んでいる発育過程の一部を、培養室で確認しているわけです。

着床は一瞬の出来事ではありません

「着床日」という言葉から、ある日のある瞬間に着床が完了するようなイメージを持つ方もいるかもしれません。

実際にはもう少し段階的です。

胚盤胞が子宮内膜へ近づき、接触し、接着し、さらに子宮内膜との関係を深めていきます。

専門的には接近、接着、侵入といった段階で説明されます。

つまり着床は、スイッチのように一瞬でONになるものではなく、胚と子宮内膜の間で段階的に進んでいく現象です。

そのため、

「移植して何時間後に着床しますか?」

「昨夜チクッとしたから、その瞬間に着床したのでしょうか?」

と考えても、その瞬間を自分の感覚で特定することはできません。

胚盤胞になったらすぐ着床する?

胚盤胞まで成長した胚は、透明帯と呼ばれる膜に包まれています。

着床へ進む過程では、この透明帯から胚が外へ出ていきます。これをハッチング(孵化)といいます。

不妊治療を受けている方なら「アシステッドハッチング」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

受精した。胚盤胞になった。子宮へ到達した。

それだけで直ちに妊娠が成立するわけではありません。いくつもの段階を経ながら着床へ進んでいきます。

着床はいつ起こる?受精から着床までの日数

では、着床はいつごろ起こるのでしょうか。

自然妊娠では、受精後すぐに着床するわけではありません。受精した胚は数日かけて細胞分裂を繰り返しながら子宮へ移動し、胚盤胞となって着床過程へ進みます。

排卵日=着床日ではありません

たとえば排卵日付近にタイミングを取った翌日に、

「今日は下腹部がチクチクするから着床したのかな?」

と思うことがあるかもしれません。

しかし、仮にその周期に受精が成立していたとしても、その段階では胚はまだ発育途中です。

排卵と着床の間には、受精して胚が発育する時間があります。

したがって、排卵直後の身体の変化をそのまま「着床症状」と考えることはできません。

「性行為から何日後に着床する?」と正確には計算できません

これもよく検索される疑問です。

ただ、性行為をした日時と受精した日時は同じではありません。精子は女性の生殖器内で一定期間生存できるため、排卵前の性行為によって妊娠することもあります。

そのため、

「性行為をした日から○日目だから今日は着床日」

と正確に割り出すことはできません。

人工授精をした日=受精した日でもありません

人工授精(AIH・IUI)も同様です。

人工授精では処理した精子を子宮内へ注入しますが、その瞬間に受精するわけではありません。

実際に受精が成立するためには、排卵された卵子と精子が出会う必要があります。

「人工授精から○日目だから、今日は必ず着床している」とは考えず、おおまかな発育の流れとして理解しておくとよいでしょう。

体外受精では「着床までの日数」をどう考える?

体外受精の場合は、自然妊娠とは少し見方が変わります。

自然妊娠では、卵管内で受精した胚が発育しながら子宮へ移動します。

一方、体外受精では採卵した卵子を体外で受精させ、一定期間培養してから子宮へ戻します。

つまり、受精から着床までの発育過程の一部を培養室で過ごしています。

初期胚移植と胚盤胞移植ではスタート地点が違います

初期胚移植では、受精後比較的早い段階の胚を子宮へ戻します。

胚盤胞移植では、さらに培養を続け、胚盤胞まで成長した段階で子宮へ戻します。

そのため、

「胚移植をしてから何日で着床しますか?」

という質問を考える場合には、どの発育段階の胚を移植したのかも重要になります。

胚盤胞移植をしたら、その日に着床する?

胚盤胞は着床に近い発育段階まで成長しています。

とはいえ、胚盤胞を子宮へ戻した瞬間に着床が完了するわけではありません。

移植された胚は、その後子宮内膜との相互作用を進めていきます。胚の発育状態や孵化の進み方などによっても経過は異なります。

ですから、

「移植当日の夜にチクッとしたから着床した」

「翌日何も感じなかったから着床していない」

という判断はできません。

「着床した」と自分でわかる方法はある?

結局ここが一番知りたいところかもしれません。

結論からいうと、着床した瞬間を自覚症状だけで確実に知る方法はありません。

妊活中は、普段なら気にしない身体の変化にも敏感になります。

胸が張っている。腰が重い。眠い。お腹がチクチクする。おりものがいつもと違う。

「今回はいつもと違う気がする」と期待する一方、何も感じなければ「今回もだめなのかな」と心配になります。

でも、身体の感覚だけで妊娠判定を先取りすることはできません。

これは自然妊娠でも同じですが、不妊治療ではさらに判断が難しくなります。黄体ホルモンなどの薬剤によっても、妊娠初期と似た身体の変化を感じることがあるからです。

「着床症状」と呼ばれているものをどう考える?

インターネットでは「着床症状」という言葉がよく使われています。

ただ、「この症状があれば着床した」と判定できる特有の自覚症状があるわけではありません。

下腹部のチクチクは「着床痛」?

SNSなどを見ると、

「移植後○日目にチクッとした」

「排卵後にいつもと違う痛みがあった」

という体験談があります。

その時期に腹部の違和感を感じた方がいること自体を否定する必要はありません。

ただ、その痛みの原因が本当に着床だったのかを後から確認することは困難です。

腹部の違和感には消化管の動きなどさまざまな要因がありますし、不妊治療中であれば排卵誘発、採卵後の卵巣の状態、薬剤なども関係します。

チクチクしたから成功、何も感じなかったから失敗、という答え合わせには使えません。

胸の張りや眠気は?

胸の張りや眠気、だるさは妊娠初期に感じる方もいます。

一方で月経前にもみられますし、不妊治療で黄体ホルモン製剤などを使用している場合にも身体の変化を感じることがあります。

妊娠による変化と月経前・治療による変化には重なる部分があるため、症状だけで区別するのは難しいのです。

おりものが変わったら?

「白くなった」「増えた」「水っぽくなった」など、おりものについてもさまざまな情報があります。

これも見た目だけから着床を判断することはできません。

とくに腟剤を使用している場合は、薬剤の残りなどによって普段と状態が違って見えることもあります。

「インプランテーションディップ」は?

基礎体温を測っている方は、

「高温期の途中で一日だけ体温が下がると着床したサイン」

という情報を見たことがあるかもしれません。

いわゆる「インプランテーションディップ」です。

ただ、一日の基礎体温の変化だけから着床を判定することはできません。

基礎体温は測定時間、睡眠、体調などさまざまな影響を受けます。

グラフの一か所だけを見て一喜一憂しなくて大丈夫です。

何も症状がないのもおかしくありません

胚移植後、

「検索するとみんな症状があるのに、私は本当に何もありません」

と心配される方がいます。

でも、判定日までほとんど身体の変化を感じない方もいます。

症状の強さと妊娠の結果を結びつける必要はありません。

「着床出血」は本当に着床したサイン?

「少しピンク色の出血がありました。これは着床出血でしょうか?」

妊活中なら、とても気になるところだと思います。

インターネットでは、

「ピンク色なら着床出血」

「茶色なら着床出血」

「生理より量が少なければ着床出血」

「1〜2日で止まれば着床出血」

などと説明されていることがあります。

ただ、私たちは出血の色や量だけを見て「これは着床出血でしょう」と簡単に結びつけることには慎重です。

出血があったという事実だけから、その原因が着床だったと確認することはできないからです。

ピンク色や茶色なら着床出血?

出血の色は、出血量や血液が体外へ出てくるまでの時間などでも変わります。

ピンク、茶色、赤色といった見た目だけで出血の原因を特定することはできません。

ですから、「ピンクだから着床した」「茶色だから妊娠している」とは考えないほうがよいでしょう。

少量なら着床出血?

これも同じです。

少量の出血には、腟や子宮頸部などからの出血を含め、着床以外にもさまざまな可能性があります。

「少量だったから着床出血」とは断定できません。

着床出血と生理は見分けられる?

検索すると、着床出血と月経を「色・量・日数」で比較した表をよく見かけます。

もちろん一般的な傾向を知る参考にはなります。

ただ、実際の出血を見て、

「この色だから着床出血」

「3日続いたから生理」

と確実に振り分けられるわけではありません。

一般的な特徴を説明することと、目の前の出血の原因を診断することは別です。

「着床出血であってほしい」と思いながら検索を繰り返している方もいるかもしれません。

その気持ちはよく分かります。

でも、色や量を何度も見比べても、そこから妊娠の結果を確定することはできません。

適切な時期の妊娠判定を待つことが必要になります。

体外受精では「出血=着床」とさらに判断しにくい

特に体外受精をしている方には、この部分を知っておいていただきたいと思います。

ホルモン補充周期で胚移植を行っている場合、自然妊娠とまったく同じ条件ではありません。

ホルモン補充周期では薬を使用しています

ホルモン補充周期では、子宮内膜を整えて胚移植へ向けた環境をつくるため、エストロゲン製剤や黄体ホルモン製剤などを使用します。

そのため、移植後に胸の張りや眠気、だるさなどがあったとしても、それが妊娠によるものなのか、治療に伴うものなのかを自覚症状だけで区別することはできません。

腟剤を使っている場合は、局所への刺激も考えます

黄体ホルモンを腟内へ投与する製剤を毎日使用している方も多いと思います。

腟内へ繰り返し薬剤を挿入していれば、腟壁や子宮頸部などへの物理的な刺激によって少量の出血がみられる可能性もあります。

そのため、胚移植後に少し血がついたからといって、

「着床した!」

と判断することはできません。

もちろん逆も同じです。

出血がまったくなかったからといって、着床していないわけではありません。

特に体外受精の場合は、「着床出血があったか、なかったか」で結果を予想しようとしないほうがよいでしょう。

出血が心配なときは自己判断しないでください

出血量が多い、出血が続く、強い腹痛がある、めまい・ふらつきなど体調に異変がある場合には、「着床出血かもしれない」と自己判断せず、医療機関へ相談してください。

体外受精後の場合は、出血があっても処方されている黄体ホルモンなどを自己判断で中止しないことも大切です。

では、着床したかどうやって確認するの?

症状でも分からない。

出血でも分からない。

では、何を見ればよいのでしょうか。

そこで重要になるのが、**hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)**です。

着床が進むと、将来胎盤になる組織からhCGが産生されるようになります。

家庭用妊娠検査薬は、このhCGを尿から検出しています。

つまり、妊娠検査薬は「着床痛」や「着床出血」を調べているわけではありません。

着床した直後なら妊娠検査薬は陽性になる?

着床が始まったからといって、その直後に家庭用妊娠検査薬で検出できるほどhCG濃度が上昇するとは限りません。

検査時期が早すぎれば、妊娠していても陰性になる可能性があります。

いわゆる「フライング検査」で注意したいところです。

市販の妊娠検査薬は、それぞれ定められた使用時期・使用方法に従ってください。

体外受精では判定日を大切に

胚移植後は、

「BT4で陰性だった」

「BT5でうっすら線が見えた」

といった情報をSNSで見かけることがあります。

ただ、胚の発育やhCGの上昇には個人差がありますし、検査薬によって感度も異なります。

また、不妊治療ではhCG製剤を使用することもあるため、治療内容によっては検査結果の解釈に注意が必要です。

早い時期の検査結果だけで薬をやめたり、治療方針を自分で変更したりせず、クリニックから指定された妊娠判定を受けてください。

良好胚を移植したのに、なぜ着床しないことがある?

「4AAだった」

「先生からも良い胚だと言われた」

「内膜も十分あると言われた」

「移植も問題なく終わった」

それでも妊娠判定が陰性だった。

体外受精を続けている方にとって、これは本当に受け止めにくい結果だと思います。

「こんなに条件が良かったのに妊娠しなかったということは、私の子宮に何か問題があるのでは?」

と考えてしまうこともあります。

でも、着床は一つの条件だけで決まるものではありません。

胚のグレードは大切。でも、それだけではありません

4AA、4AB、3BBなどの胚盤胞のグレードは、発育状態や形態を評価するための大切な情報です。

ただし、形態評価が良いことと、胚の染色体が正常であることは同じ意味ではありません。

見た目から染色体の情報まですべて分かるわけではないからです。

年齢も胚側の要因を考えるうえで重要です。女性の年齢とともに卵子由来の染色体異常が増えることは知られています。

とはいえ、「年齢が高いから着床しない」と一言で片づけるものでもありません。

年齢、採卵数、受精率、胚盤胞到達率、これまでの移植歴などを合わせて考える必要があります。

子宮側を確認することもあります

状況によっては、子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮腔内癒着、卵管水腫など、子宮やその周辺の状態を確認することがあります。

ただし、

「移植が陰性だった=子宮に異常がある」

ではありません。

一度の移植不成功だけで、すべての検査を追加する必要があるとも限りません。

子宮内膜は厚ければ厚いほどいい?

胚移植前になると、「内膜は何mmでしたか?」という数字が気になります。

診察のたびに、

「今日は7mmだった」

「8mmを超えた」

と一喜一憂した経験がある方もいるでしょう。

子宮内膜の厚さは、胚移植の際に確認される大切な情報の一つです。

ただ、

「○mmを超えれば着床する」「薄ければ妊娠できない」と一つの数字だけで結果が決まるわけではありません。

内膜の数字を気にするあまり、

「もっと厚くしなければ」

「この食品を食べれば厚くなるらしい」

「血流を上げなければ」

と追い込まれてしまう方もいます。

数字を見ることは必要です。

でも、その数字だけが妊娠を決めているわけではありません。

反復着床不全とは?

胚移植がうまくいかなかったとき、「反復着床不全」という言葉を検索して不安になる方がいます。

英語ではRecurrent Implantation Failure、略してRIFと呼ばれます。

「2回陰性だったから反復着床不全?」

「3回移植して妊娠しなかったら着床障害?」

と、回数が気になるかもしれません。

ただ、この言葉は少し慎重に受け止めたほうがよいでしょう。

「何回失敗したらRIF」と単純には決められません

反復着床不全には、これまでさまざまな定義が使われてきました。

近年は単純に「○回失敗したら全員RIF」と考えるのではなく、女性の年齢、移植した胚の数や状態、これまでの治療歴などから、本来期待される妊娠の可能性を含めて個別に考える方向になっています。

ESHRE(欧州ヒト生殖医学会)のGood Practice Recommendationsでも、固定された移植回数だけではなく、患者さんごとの背景を考慮して評価する考え方が示されています。

ですから、一度や二度の胚移植が陰性だったというだけで、

「私は着床できない身体なんだ」

と決めつける必要はありません。

良好胚を移植しても、一回ですべての方が妊娠するわけではないからです。

繰り返している場合は、これまでの治療を一度整理する

一方、胚移植を繰り返しても妊娠に至らない場合には、主治医とこれまでの治療を振り返る意味があります。

何回採卵したのか。

どの発育段階の胚を移植したのか。

胚の形態評価はどうだったのか。

これまで一度でもhCGが陽性になったことがあるのか。

子宮腔の評価を受けたことがあるのか。

自然周期か、ホルモン補充周期か。

流産歴はあるのか。

「着床しない」という同じ言葉を使っていても、実際の背景は一人ひとりかなり違います。

必要に応じて、超音波検査や子宮鏡検査などによって子宮腔を確認することもあります。

ここで大切なのは、検査の数を増やすこと自体ではありません。

「今の自分には、なぜこの検査が必要なのか」

を確認しながら進めることです。

「検査を増やせば着床率が上がる」とは限りません

不妊治療が長くなってくると、

「まだ調べていない原因があるのでは?」

と思うようになることがあります。

SNSで、

「この検査をしたら原因が分かった」

「この治療を追加したら次の移植で妊娠した」

という経験談を目にすれば、自分も試したくなるかもしれません。

その気持ちはよく分かります。

ただし、不妊治療では、検査が存在することと、その検査を受けることで妊娠・出産につながる可能性が高まることは同じではありません。

反復着床不全に対して提案されている検査や追加治療の中には、有効性についてまだ十分な科学的根拠が得られていないものもあります。ESHREも、RIFに対して行われるさまざまな検査・治療について、エビデンスを踏まえて慎重に選択する必要性を示しています。

費用や身体的負担を伴う検査もあります。

受ける前に、

「何を調べる検査なのか」

「結果によって次の治療がどう変わるのか」

「自分の治療歴から考えて、本当に必要なのか」

を主治医に聞いてみるとよいでしょう。

「着床の窓」とERAなどの子宮内膜受容能検査

不妊治療について調べていると、

「着床の窓がずれている」

という表現を目にすることがあります。

子宮内膜はいつでも同じ状態ではありません。

排卵後、あるいはホルモン補充周期では黄体ホルモンの作用を受けながら変化し、胚を受け入れる状態へ移っていきます。

この胚を受け入れやすい時期が、一般に「着床の窓」と呼ばれています。

「着床の窓がずれている=着床しない」とは限りません

ここで注意したいのは、

「良好胚を移植して妊娠しなかった」

↓

「着床の窓がずれているのかもしれない」

↓

「ERAをすれば解決できる」

と一直線に考えないことです。

ERAなどの子宮内膜受容能検査では、子宮内膜組織の遺伝子発現などを調べ、胚移植のタイミングを個別化するという考え方が用いられています。

一見すると非常に合理的に思えます。

しかし、現時点では、こうした子宮内膜受容能検査をすべての反復着床不全の方へルーチンで行うことを支持する十分な根拠はありません。ESHREの提言でも、市販されている子宮内膜受容能検査をRIFの原因診断として日常的に使用するには根拠が不十分とされています。

つまり、

「何回か移植が陰性だったから、次はERAを受けなければ」

と焦る必要はありません。

検査を提案された場合には、自分の場合は何を目的として行うのか、結果によって移植方法がどう変わるのかまで説明を受けて判断するとよいでしょう。

「着床前診断」とは?着床を調べる検査ではありません

「着床」について検索していると、「着床前診断」という言葉が出てくることがあります。

名前だけを見ると、

「着床できるかどうかを調べる検査?」

と思うかもしれません。

実際には、着床したかどうかを調べる検査ではありません。

現在は「着床前遺伝学的検査(PGT)」という言葉が使われ、胚を子宮へ移植する前に遺伝学的な情報を調べます。

代表的なものが、PGT-A、PGT-SR、PGT-Mです。

PGT-A

PGT-Aは、胚の染色体数の異常を調べる検査です。

胚盤胞の一部の細胞を採取して検査します。

先ほどお話ししたように、胚盤胞のグレードは主に形態を評価したものなので、見た目だけでは染色体数について判断できません。

PGT-SR

PGT-SRは、夫婦のどちらかに均衡型転座などの染色体構造異常がある場合などに検討される検査です。

PGT-M

PGT-Mは、特定の重篤な遺伝性疾患に関係する遺伝子変化について調べる目的で行われます。

日本では、日本産科婦人科学会がPGTに関する見解や実施体制を定めており、情報も随時更新されています。日本産科婦人科学会「着床前遺伝学的検査」関連情報

PGT-Aについても、

「検査をすれば必ず着床する」

「正常と判定された胚なら必ず出産できる」

という検査ではありません。

検査そのものの限界もありますし、誰にでも同じメリットがあるわけではありません。

自分が対象になるのか、検査によって何が分かるのか、治療方針にどう影響するのかを、主治医や必要に応じて遺伝カウンセリングで確認することが大切です。

着床しやすくするために、自分でできることは?

ここまで読むと、

「検査のことは分かった。でも、自分でできることはないの?」

と思うかもしれません。

妊活中は、

「着床にいい食べ物」

「着床率を上げるサプリ」

「移植後にしてはいけないこと」

といった情報が次々と目に入ります。

何か一つでもできることがあるなら、やっておきたい。

そう思うのは自然なことです。

ただ、生活習慣についても、これをすれば着床するという特別な方法はありません。

「着床させるための生活」というより、妊娠を目指していくうえでの健康管理として考えてみてください。

「着床にいい食べ物」はありますか?

パイナップル。

アーモンド。

アボカド。

ざくろ。

渡り蟹。

妊活をしていると、いろいろな食品の名前を目にします。

食事を楽しみながら取り入れること自体に問題はありません。

ただし、特定の食品を食べれば着床しやすくなると考える必要はありません。

「着床に効く食べ物」を探し続けるよりも、主食、主菜、副菜を基本に、魚、肉、卵、大豆製品、野菜、果物など、さまざまな食品から栄養を摂ることを考えましょう。

妊活のために食事を完璧にしようとして、食べること自体がストレスになってしまっては本末転倒です。

葉酸は大切。でも「着床させるサプリ」ではありません

妊娠を計画している女性にとって、葉酸は重要な栄養素です。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性などに対し、通常の食品に加えて一定量の葉酸を摂取することが望ましいとされています。これは主に胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減を目的としたものです。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」

つまり葉酸は大切ですが、

「葉酸を飲むと着床率が上がる」

という意味ではありません。

また、サプリメントは多ければ多いほどよいものでもありません。

いくつも併用している方は成分が重複していることもあります。治療中の場合は、使用しているサプリメントも医師や薬剤師へ伝えておくと安心です。

睡眠や運動はどう考える?

睡眠や適度な運動は、日々の健康を保つうえで大切です。

ただし、

「昨日寝不足だったから着床しなかった」

「移植後に歩きすぎたからダメだった」

と、一日の行動と妊娠判定を直接結びつけて自分を責めないでください。

とくに採卵前後は卵巣が腫れていることがあります。運動について医師から指示を受けている場合は、そちらを優先しましょう。

喫煙については、妊娠を希望する場合には禁煙が重要です。受動喫煙にも注意したいところです。

飲酒についても妊娠の可能性がある時期は慎重に考えます。

「身体を温めると着床しやすくなる」は本当?

妊活を始めると、

「冷えは妊活の大敵」

「子宮を冷やしてはいけない」

という言葉をよく見かけます。

鍼灸院へ来られる方からも、

「私は冷え性だから着床しないのでしょうか?」

と聞かれることがあります。

この部分については、鍼灸院だからこそ慎重にお伝えしたいと思っています。

手足が冷たいことと、胚が着床するかどうかをそのまま一対一で結びつけることはできません。

「身体を温めれば着床率が上がる」と単純に言うこともできません。

湯船に入る。

冷えてつらいときに温かい服装をする。

温かい飲み物を飲んでほっとする。

そうしたことまでやめる必要はありません。自分が心地よく過ごせるなら、日常のセルフケアとして取り入れてよいと思います。

ただ、

「温活をしなかったから着床しなかった」

とは考えないでください。

「子宮の血流を良くすれば着床率が上がる」は本当?

「子宮血流を改善する」

という表現も、妊活の情報ではよく見かけます。

確かに、子宮や卵巣にも血液が流れており、血流そのものが身体の生理機能に関係していることは当然です。

ただ、そこから、

血流を良くする → 内膜が厚くなる → 着床率が上がる

と一直線につなげてしまうと、話が単純になりすぎます。

手足が温かいことと子宮の血流が同じ意味でもありませんし、「冷え性だから子宮の血流が悪く、だから着床しない」と決めることもできません。

着床には胚の状態、染色体、子宮内膜、子宮腔、ホルモン環境、年齢など多くの要素が関わっています。

鍼灸院の立場から「血流を良くすれば着床します」と言ってしまえば分かりやすいかもしれません。

でも、分かりやすいことと正確であることは別です。

ぐんじ鍼灸治療院では、「鍼灸で子宮血流を上げれば、その結果として着床率が上がる」という単純な説明はしていません。

不妊治療と並行して鍼灸を取り入れるという考え方

では、妊活中の鍼灸をどう考えればよいのでしょうか。

まずお伝えしておきたいのは、鍼灸は胚を着床させるための治療ではないということです。

鍼灸を受ければ妊娠できる、着床率が必ず上がる、とお約束することもできません。

体外受精を受けているのであれば、

採卵。

受精。

胚培養。

胚移植。

ホルモン管理。

必要に応じた検査や治療。

これらは生殖医療を行う医療機関の役割です。

そのうえで、

「不妊治療を続けながら、身体全体のコンディションにも目を向けたい」

「採卵や移植が続き、身体が疲れている」

「肩や腰のつらさも一緒にみてほしい」

といった方が、補完的なケアとして鍼灸を取り入れるという考え方があります。

採卵前・移植前・移植後は治療状況を教えてください

不妊治療と並行して鍼灸を受ける場合には、

現在どの周期なのか。

採卵予定日はいつか。

胚移植をしたのか。

判定日前なのか。

どのような薬を使っているのか。

妊娠の可能性があるのか。

といった情報を鍼灸師にも伝えてください。

採卵後に強い腹痛がある、出血が多い、息苦しい、急に体調が悪くなったなどの場合には、鍼灸ではなく、まず治療を受けている医療機関への相談が必要です。

ぐんじ鍼灸治療院が「着床」だけを見ない理由

不妊治療を続けていると、「着床」という言葉がだんだん大きくなっていきます。

内膜は何mmだった。

胚盤胞は何グレードだった。

移植して今日は何日目。

昨日はお腹がチクチクした。

今日は何も感じない。

着床の窓はずれていないだろうか。

血流は悪くないだろうか。

何を食べればいいのだろう。

気がつくと、毎日の出来事をすべて「着床するか、しないか」で考えてしまうことがあります。

でも、不妊治療を受けているのは子宮だけではありません。

仕事をしながら通院している方もいます。

毎日決まった時間に薬を使っている方もいます。

何度も採血をして、採卵をして、受精結果を待ち、胚盤胞になるかを待ち、移植したら今度は判定日を待つ。

結果が思うようにならなければ、また次の治療について考えなければなりません。

そうした生活を送っている、一人の女性です。

だから私たちは、

「どうしたらこの胚を着床させられるか」

だけを見るのではなく、その治療を受けている方の身体全体を見ることを大切にしています。

鍼灸をすれば必ず妊娠する。

内膜が必ず厚くなる。

血流が良くなれば着床する。

そうしたお約束はできません。

できないことまで「できます」と言わないことも、不妊治療に関わる鍼灸院として大切なことだと考えています。

必要な検査や治療は医療機関できちんと受けていただく。

そのうえで、私たちがお手伝いできる範囲で、治療を続けている身体をサポートしていく。

ぐんじ鍼灸治療院では、そのように考えています。

着床についてよくある質問

Q.着床は排卵から何日後ですか?

排卵してすぐに着床するわけではありません。受精が成立した場合、胚は数日かけて発育しながら子宮へ移動し、胚盤胞となって着床過程へ進みます。

排卵日の翌日に感じた身体の変化を「着床」と判断することはできません。

Q.性行為から何日後に着床出血が起こりますか?

性行為をした日時と受精した日時は同じではないため、「性行為から○日後」と正確に計算することはできません。

また、少量の出血があったとしても、その原因が着床だったと見た目だけで確認することはできません。

Q.着床した瞬間は分かりますか?

自覚症状から着床した瞬間を知ることはできません。

着床そのものも、一瞬で完了するというより段階的に進んでいく現象です。

Q.下腹部がチクチクするのは着床痛ですか?

その時期に下腹部の違和感を感じる方はいますが、その原因が着床だったかどうかを症状だけで判断することはできません。

痛みが強い場合や続く場合には、別の原因も考えて医療機関へ相談してください。
Q.着床すると必ず出血しますか?

いいえ。出血がなくても妊娠していることはあります。

反対に、出血があったから着床したとも判断できません。

Q.ピンク色や茶色の出血なら着床出血ですか?

色だけでは分かりません。

ピンク、茶色、赤色といった見た目だけから出血の原因を特定することはできません。

Q.着床出血は何日続きますか?

「○日なら着床出血」と日数だけで判断することはおすすめしません。

そもそも目の前の出血が着床によるものかどうかを、色・量・期間だけで確定することができないからです。

Q.着床出血と生理は見分けられますか?

見た目だけで確実に区別するのは難しいです。

妊娠しているかどうかを知りたい場合には、適切な時期に妊娠検査を行う必要があります。

Q.胚移植後に出血しました。着床したのでしょうか?

出血だけでは判断できません。

ホルモン補充周期や腟剤を使用している場合には、治療や局所への刺激など、着床以外の要因も考える必要があります。

Q.腟剤を使っていて出血しました。薬をやめたほうがいいですか?

自己判断で処方薬を中止しないでください。

出血について心配な場合には、不妊治療を受けている医療機関へ連絡して指示を受けましょう。

Q.胚移植後、何も症状がありません

症状がないからといって、着床していないとは判断できません。

判定日前に症状だけで結果を予想しなくて大丈夫です。

Q.妊娠検査薬はいつから使えますか?

早すぎる時期に検査すると、妊娠していてもhCG濃度が十分でなく陰性になる可能性があります。

市販の検査薬は説明書に記載された使用時期を守り、体外受精の場合はクリニックから指定された妊娠判定日を優先してください。

Q.良好胚なのに着床しないのはなぜですか?

胚盤胞のグレードは主に形態を評価したもので、胚に関するすべての情報が分かるわけではありません。

胚側の要因だけでなく、年齢や子宮の状態などさまざまな要素が関係するため、一度の移植結果だけで原因を特定することはできません。

Q.子宮内膜が薄いと妊娠できませんか?

内膜の厚さは胚移植を考えるうえで大切な情報の一つですが、その数字だけで妊娠の可否が決まるわけではありません。

ご自身の内膜の状態については、移植を担当する医師と相談してください。

Q.身体を温めれば着床しやすくなりますか?

冷えてつらいときに身体を温め、心地よく過ごすことはセルフケアとして構いません。

ただし、「温めれば着床率が上がる」「冷えているから着床しない」と単純に結びつけることはできません。

Q.鍼灸を受ければ着床率は上がりますか?

鍼灸によって着床や妊娠を保証することはできません。

必要な生殖医療を受けながら、身体全体のコンディションを考える補完的なケアの一つとして利用する、というのが当院の考え方です。

まとめ|「着床したサイン」を探しすぎなくて大丈夫です

排卵後や人工授精後、そして胚移植後。

妊娠判定までの時間は、普段よりずっと長く感じられるものです。

昨日は胸が張っていた。

今日は張っていない。

お腹がチクチクした。

茶色いおりものが少し出た。

体温が下がった。

何も症状がない。

一つ変化があるたびにスマートフォンを開いて、

「着床 症状」

「着床出血 色」

「胚移植後 症状なし」

と検索してしまう方もいると思います。

けれど、身体の変化だけで着床したかどうかを確かめることはできません。

特に体外受精では、ホルモン補充や黄体ホルモン製剤、腟剤などの影響もあるため、自然妊娠以上に症状の解釈が難しくなります。

少量の出血についても同じです。

「着床出血であってほしい」と思う気持ちは自然ですが、色や量から答え合わせをすることはできません。

だからこそ、判定日までは身体の変化を毎日採点しすぎず、適切な時期に妊娠判定を受けることが大切です。

そして胚移植を繰り返しても結果につながらない場合には、

「私の身体が悪いから」

と考えるのではなく、これまでの治療歴を主治医と一緒に整理してみてください。

必要な検査があるかもしれません。

一方で、検査を増やせば必ず答えが見つかるわけでもありません。

着床は、胚と子宮内膜の間で起こる複雑な現象です。

だから、

「この食べ物を食べればいい」

「温めればいい」

「血流を良くすればいい」

「この検査を受ければいい」

と、一つの方法だけで考えないことも大切です。

不妊治療を続けながら、身体のことも相談したい方へ

ぐんじ鍼灸治療院では、不妊治療を受けている方の鍼灸にも対応しています。

「次の採卵に向けて身体のケアもしておきたい」

「移植を繰り返していて、身体のことも相談したい」

「病院での治療は続けながら、鍼灸も取り入れてみたい」

「今の治療周期で鍼灸を受けても大丈夫なのか知りたい」

という方は、ご相談ください。

現在の治療内容や採卵・移植の予定、使用している薬などを伺いながら、その時の身体の状態に合わせて施術を考えていきます。

私たちは、鍼灸で着床や妊娠を保証することはできません。

必要な検査・治療は医療機関で受けていただき、その治療と並行しながら、私たちがお手伝いできる範囲で身体をサポートすることを大切にしています。

免責事項

本記事は、着床、妊娠、不妊治療などについて一般的な情報を提供することを目的としており、個別の診断・治療・医学的助言を行うものではありません。

妊娠の成立時期や必要な検査・治療は、年齢、治療歴、胚の状態、既往歴、使用薬剤などによって異なります。

胚移植後の出血や腹痛について不安がある場合には、インターネット上の情報だけで判断せず、治療を受けている医療機関へご相談ください。処方されているホルモン剤などを自己判断で中止・変更しないでください。

鍼灸は、医療機関における不妊症の検査・診断・治療を代替するものではなく、着床や妊娠を保証するものでもありません。

参考情報

記事公開時の参考資料としては、一般的なまとめサイトではなく、専門学会・公的機関を中心に置くことをおすすめします。

 

名古屋不妊鍼灸専門 ぐんじ鍼灸治療院

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